こんだけいろいろ音楽聴いて、専門家ヅラして原稿書いたり、DJしたりしていても、まだまだ時として、背中がゾ〜〜〜ッと寒くなるようなことに出くわします。それが、実は今回の原稿依頼で起こったんですよね。
主人公は、ロンナイ・ファンはもとより、70年代のUKパンクとかパワーポップとかを好んで聴いているような音楽ファンなら、よくご存知のプラスティック・ベルトラン。名前くらいは聞いたことある方多いんじゃないでしょうか
その曲は「恋のパトカー」(別名「恋のウーイーウー」)で、実際にロンナイだけでなく、イギリスやドイツ、フランスなどヨーロッパの一部でも当時、つまり78年頃ですが、おおいにヒットしていました。彼にとってのデビュー・ヒットであると同時に、最大のヒットになっているんです。
まぁ、だからか、悪く言えば「一発屋」としてバッサリ。アーティストとしての評価はほぼされていないも同然。アメリカでヒットしなかったのも痛かったですね。MTVで人気に火がつく時代でしたから。しかし、今回VIVIDからリイシューされる、というので、ぼくに原稿を書く依頼が舞い込み、じゃあ、やってみっかな〜、なんて気楽に構えて向かいあって、そりゃあもうビックリでした。
この作品、実はCD化されるのはこれが初めてなんですよね。けど、その昔、一度アルバムが出ているんです。今はないレコード会社のラジオ・シティという所から79年に。その解説を書いたのがなんとボクでした。その頃のことはあんまり覚えてないんだけど、でも、メーカーから渡されたデータ、資料はほとんどゼロだったことは確かで、文字数少なくていいですか?とお願いした記憶があるし、実際に手元にある現物も、2000字くらいの走り書きみたいな解説です。
それでも、言わせてもらえば、書いてあることには間違いはない、と今でも自負しています。彼の音楽性やアーティストとしての在り方、将来性なども書いていますが、それはあの時点で得た情報で精一杯のことをしたと思ってます。
しかし、あれからおよそ30数年たち、今ではインターネットという便利なものがあります。そこにはいろいろな情報が埋もれて?いて、見つけ出すのがちょいと厄介な時もあるけど、でも、だいたいのことは探せます。プラスティック・ベルトランもすぐに検索出来ました。サイトはシンプルでしたが、今でも現役で活動していることを知り、それだけでも大いなる驚きでした。見た目はさすがに大きく変貌していて、あどけない笑顔の好青年は、今ではちょいとコワモテするオヤジなミュージシャンになってました。キース・リチャーズの変貌ぶりといい勝負かも、なくらいに。
でもでも、自分的に驚いたのはそういう部分でもないんです。実体のアルバムそのものに「え?????!!!!!」と固まりました。何故って、前に書いた時のレコードと今回のCDとでは、ジャケット・デザインはもちろん、内容がまるで違っていたんですから。しかし、今の今まで、自分はオリジナルのアルバム、つまり今回CD化されたものを見たことも聴いたこともなかったんです。79年に出た赤いジャケットに彼の笑顔の写真のアルバムが唯一のものと、そう思い込んでいたんですから。
これ以上は、今回の世界初CD化された作品を購入して、解説を読み、CDを聴いてみて下さい。とにかく、今30年以上の歳月を経て甦ったプラスィック・ベルトランのデビュー・アルバムは、前にも言ったんですが、「恋のパトカー」だけ聴けばいい、という代物でないことだけはあの頃と変わりません。
思い込みはいけません!と自分に言い聞かせている今日この頃です。