60年代のアメリカ西海岸、サンフランシスコ、ロサンジェルス界隈といえば真っ先にイメージするのはたいていが、サイケデリックなアシッド関連のロックとか、67年のモンタレー・ポップ・フェスティバルに象徴される、フラワーパワーとかヒッピーとかではあるまいか。
まぁ、実際それらはあの頃あの時代で一番一般的にもニュースヴァリューのあった、いわば衝撃的な事件でもあった。だから、日本でもそういうことが大きな話題となり、自分自身も中学生とかで音楽雑誌などを眺めて、ヒッピーとかに憧れたりしたものです。
しかし、その一方でヒットチャートではビーチボーイズやジャーン&ディーンらのサーフィン・サウンドが人気を集め、さらにはザ・バーズがフォークロックという新しいジャンルを生み出し、ママス&パパスなどのスターが現れ明るく爽やかなポップスにも人気がありました。
そんな中に期待の新星として紹介されたのがコーラスワークやアレンジが素晴らしい6人組のアソシエーションでした。66年の11月にアルバム・デビューするや、たちまちチャートを急上昇して全米5位まで上がる大ヒットになり、シングルの「アロング・カムズ・メアリー」、「チェリッシュ」も同時にヒット曲となり彼らの人気は早々と確固たるものとなりました。
これらのナンバーは未だに人気で、ラジオでもたまに流れますし、ぼくはクラブDJでもよく使います。特に「アロング〜」の方はテンポもいい感じでダンス・チューンとしても十分魅力的なナンバーです。もちろん、サウンドも40年以上も前のものとは思えない、エバーグリーンな感覚のものです。
この、素晴らしいサウンドを作り出したのはメンバー自身のセンスや技量もありますが、やはりプロデュースを務めたカート・ベッチャーの存在を抜きにしては考えてられないでしょう。彼は今でこそ、ソフト・ロックの先駆者、達人として一部のファンから熱狂的に支持されていますが、当時はほとんど無名のローカルな存在で、彼がやっていたバンド、ゴールドブライヤーズについても知っている人はほとんどいませんでした。しかし、実際こういう人物が当時のカリフォルニアあたりに少なからず存在していたことは、ビーチボーイズ周りの人脈を基本に、シーンの活性化が成されていたことを雄弁に物語っています。
アソシエーションはポップでありながらも、曲をチェックしていくと、それぞれが多様である意味、実験的とも思われるような音作りをしていることが分かります。それはあたかもビーチボーイズのリーダー、ブライアン・ウィルソンが名作アルバム「PET SOUNDS」で行っていたのと、通底しているものだと確信しています。
と、何やら小難しい理屈をこねる感じにならましたが、要するに、あの時代の西海岸のポップ・ミュージックの素晴らしいを代表する作品だということなんです。それが、当時と同じくモノラルで改めてリイシューされたことは、我々日本のポップ、ロック・ファンにとっても素晴らしいことだと思います。是非一度聴いてみて欲しいですね。