ロンリー・サーファー（SHM-CD紙ジャケット仕様） THE LONELY SURFER

Produced by Jimmy Bowen■オリジナル・リリース：1963年／Reprise R9-6101■オリジナル・ジャケットを忠実に再現した紙ジャケット仕様（日本制作）■日本初CD化■オリジナル・ライナーノーツ（フィル・スペクター）及び対訳掲載■書き下ろしライナーノーツ（土橋一夫）封入
1960年代前半~中盤にかけて、ロネッツやクリスタルズ、ダーレン・ラヴ、ボブ・B・ソックス＆ザ・ブルー・ジーンズ、ライチャス・ブラザースなどを手がけ、「Be My Baby」「He’s A Rebel」「Da Doo Ron Ron」「You’ve Lost That Lovin’ Feeling（ふられた気持）」など多くの名曲を世に送り出した、アメリカを代表するプロデューサー、フィル・スペクター。今年（2011年）11月~12月にかけて、彼が興したフィレス・レコード時代の作品がベスト盤やボックス・セットとなって次々と日本盤でリイシューされ大きな話題となっているが、そのフィル・スペクターをアレンジャーとして全面的に支え、多くの名曲のサウンドを作ったのが、このジャック・ニッチェだ。彼はその後、ニール・ヤングやハーパース・ビザール、ローリング・ストーンズ、バッファロー・スプリングフィールドなどの作品にも参加し、また一時期はクレイジー・ホースのメンバーとしても活動した。さらにその後は映画音楽の世界でも大活躍し、『カッコーの巣の上で』『エクソシスト』『ナイルの宝石』など30本以上の映画のスコアを手がけ、1982年には大ヒットした「愛と青春の旅立ち」でアカデミー主題歌賞を受賞しているが、残念ながら2000年8月に心臓麻痺で他界している。
　そんな彼がフィレスでの仕事をはじめ、様々なアーティストの作品にアレンジャーとして参加していた1963年に、リプリーズからリリースしたソロ名義による1stアルバムが本作だ。
　収録されている12曲は全てインストだが、シングル・カットされ全米39位のスマッシュ・ヒットを記録した「The Lonely Surfer（悲しきサーフィン）」に加え、クリスタルズの代表曲である「Da Doo Ron Ron」や、ライチャス・ブラザースのヴァージョンでもお馴染みの「Ebb Tide（ひき潮）」、それに「世界残酷物語」や「荒野の七人」「世界女族物語」といった映画のテーマ曲なども取り上げられるなどヴァラエティに富んだ選曲がなされており、しかもそれらを演奏するのはスペクター・セッションを構成していたハル・ブレイン（ds）、トミー・テデスコ（g）、ビル・ピットマン（g）、レイ・ポールマン（b）、ドン・ランディ（p）、レオン・ラッセル（p）、そして後にブレッドで大成功を収める事になるデヴィッド・ゲイツ（b）らといった錚々たる顔ぶれだ。スペクター・サウンドのファンにはまさにマスト・アイテムとして知られている本作だが、意外にも今まで正式に日本盤CDとしてリリースされた事はなく（輸入盤に帯＆解説付きの日本盤仕様CDを除く）、世界で初めてCD化された米Collector’s Choice盤も同レーベルの消滅と共に現在は入手困難となっているため、まさに待望のリイシューと言えよう。
　なお本作のジャケットの絵柄は、大瀧詠一が1977年に多羅尾伴内楽團名義でリリースしたインスト・アルバム『多羅尾伴内楽團 vol.1』の元ネタとしても知られ、ナイアガラ・ファンにもアピールできる1枚である。