イリュージョン（生産限定紙ジャケット仕様） ILLUSION

■70年代ギャビー・パヒヌイなどの活躍によって、ハワイにおけるフォーク・リヴァイヴァルが活況を呈する中、60年代英米のサイケデリック・ロックやフォーク・ロックを吸収しながら、若い世代によるあらたな価値観にもとづく音楽づくりも静かに進行していた。73年、ホノルルのシナージア・スタジオ/レーベルからリリースされたジーズ・トレイルズの唯一のアルバムはその代表例だが、その翌年、やはり同レーベル/スタジオが生んだハワイアン・フォーク・ロックの傑作がイリュージョンの本盤だ。ウェンデル・イング（ピアノ、クラヴィネット）、ハンク・レアンドロ（アコースティック・ギター）、バッチ・オサリヴァン（ベース）、デニー・マエダ（エレクトリック＆クラシカル・ギター）、そしてグレッグ・ナット（ドラムス）からなる５人組。リーダー的存在のイングは、60年代後半から70年代初期まで、ニューヨークやサンフランシスコで過ごした経験を持っていた。プロデュースはスタジオ所有者（レーベル主宰者）でジーズ・トレイルズも手がけたピーター・コレイジオ。日常と非日常の狭間を漂うようなトレイルズの作風を引き継ぎつつ、よりコンテンポラリーで清涼感あふれた西海岸サウンドが楽しめる。冒頭を飾る[1]は、76年リリースのオムニバス・アルバム『ホーム・グロウン』（第1集）で再録（オリジナルより3分ほど短いエディット・ヴァージョン）。そこでの名義は“ウェンデル・イン・ウィズ・ハンク・レアンドロ＆フレンズ”で、“フレンズ”としてクレジットされているのは、やはりイリュージョンの残りのメンバーだった。