ゴスト・タント Gost Tanto

■1981年作の『Novidade De Vida』、90年作の『Partiu Do Alto』に続く、12年の時を隔てた最新作アルバム『Gusto Tanto』が奇跡のリリース！　それにしてもマイペースな、地に足がついた永遠不滅のエヂソン・イ・チタ流ＭＰＢサウンドが優しく全編を貫く、ナチュラルなトーンにグラデイトされた暖かな人間性をしのばせる名作！\r

■エヂ・モッタのスキャットとヴォーカルをフィーチャーした｢We´ve Only Just Begun｣を思わせるメロウ・ソウル｢Something Devine｣、極彩色のピアノ・マジックを披露するドナート、ヴォーカル・アレンジを担い、ファンタジックなコーラスの現出に貢献するセリア・ヴァズの起用がズバリ的中したパストラル・チューン｢Roda Piao｣、チタのポルトガル訛りの拙い英語が、かえってソフトな味わいを醸し出すドリーミーなサンデー・アフタヌーン・ボサノヴァ｢Stay｣、自然の持つ優しさをホベルチーニョ・シルヴァが、パーカッションで情感豊かに表現する｢Geriba｣など、全１２曲いずれもが佳曲ぞろい。

■本作の主役2人はブラジル音楽界でも非常に大事なシーンに居合わせた重要人物である。エヂソン・ロボはドン・サルヴァドール・トリオやル・トリオ・カマラといった素晴らしいジャズ・サンバのグループに在籍していただけでなく、マルコス・ヴァーリ、マリオ・カストロ・ネヴィス、テノリオ・ジュニオール、ヴァルテル・ブランコ等との様々なセッションでその卓越したベース・プレイを聴かせてくれたつわものである。奥方であるチタは、ブラジルでも最初期に女性でコンポーザーとして認められたシンガーである。そのたおやかな歌声はボサノヴァの古き良きロマンを感じさせてくれるドリーミーなものだ。ブラジル・ポリドールやフランス・バークレーでのソ\ロ・アルバムでも彼女の並外れた才能を遺憾なく発揮している。\r

■解説：北浦知司