トランセンデンス TRANSCENDENCE
- アーティスト
-
アリス・コルトレーンAlice Coltrane
- レーベル
- ヴィヴィド・サウンド
- 商品区分
- CD
- 発売日
- 2005/06/15
- 品番
- VSCD9318
- 税込価格
- 2,530円
- シリーズ
- DIVERSE ANGLES
- ジャンル
- バーコード
■昨年、26年ぶりに新作『Translinear Light』を発表したアリス・コルトレーン。ピアニスト、オルガニスト、ハープ奏者、そしてあの故ジョン・コルトレーンの細君といった彼女のさまざまな横顔はあまりにも有名なだけに、ココでは説明は不要だろう。1977年に発表された本盤は、ストリング・セクションを形成するサトリ・カルテットを率い、インパルス時代から提唱し続けている、啓示的でセレスチャルなエッセンスを包含したナンバーと、黒人霊歌やゴスペルに見出せるコール・アンド・レスポンス然とした様式に、ヒンディー語のヴォーカルを配するという新たな試みがなされた楽曲が並ぶ意欲作!\
■前者を構成する「Radhe-Shyam」とタイトル・トラックでは、ハープとカラフルなストリングスが折り重なって、崇高なムードが醸し出されており、そのサウンドは同時にドロシー・アシュビーの諸作をもイメージさせる。また同様のベクトルを備え、さらにインド色が加味された「Vrindavana Sanchara」の魅力も侮りがたい。一方、後者を築き上げている「Sivaya」、「Ghana Nila」、「Bhaja Govindam」、「Sri Nrsimha」では、これまでのアリスの作品にない躍動感が内包されている点に着目すべきだろう。アフロ・アメリカンとしての自らのルーツを多分に垣間見せるアリスのスウィンギーかつブルージーな鍵盤さばき、ハンドクラップも交え、交奏形式で繰り出されるソウルフルなコーラス・ワークを携えたこれらのナンバーは、黒人教会で催されるミサがインドに舞い降りてきたかのような錯覚を聴き手に抱かせる!\
■晩年のコルトレーン・グループに参加し、彼の遺志を受け継ぎつつ独自の音楽観を築いていったアリスのインパルス時代を彼女のキャリアの第1期とするなら、'76年から'78年にかけてのワーナー時代は、その第2期と捉えることができるだろう。ワーナー移籍後の第3作目に当たるこのアイテムでは、一貫して創作の源であり続けるインド音楽のエレメントを、アメリカ黒人が共通基盤としてもつゴスペル、ブルースのイディオムにアダプトさせるという新たなテーマを掲げ、その具現化に力を注いでいる。つまり東洋に眠る奥義を会得して、そこにトラディショナルなブラック・ミュージックの要素を邂逅させながら、サウンドとしても、そして霊的にも進化を遂げていくプロセスは、本盤を含め、この時期に発表された『Radha-Krsna Nama Sankirtana』、『Transcendence』、『Transfiguration』の4部作に刻印されていると言えるのだ!
■解説:北浦知司