強い風 ANGIN KENCANG

マレーシアの人気ロックバンド『Hujan』のフロントマンにしてバンドの中心、ノ・サリのソロデビュー作があまりにもメロウで素晴らしいです。本国では数々の受賞歴があり、マレーシアを飛び越え、ヨーロッパやオーストラリアでもツアーを行うなど、すでに国民的なバンドとして認識されるHujanの活動に加え、プロデューサーとしても幅広く楽曲提供、映画やTV番組のプロデュースなどを行なう彼が、ロック、ヒップホップ、ジャズなどを通過し、ソロ・アーティストとして行き着いたのは、あくまでも歌心を大切に聴かせる極上のメロウチューンの数々。そして、言語を超越した心に響くメロディだけが詰まったソロデビュー作が『強い風』です。

名古屋の田舎町で撮影されたMVも印象的なタイトル曲「02. Angin Kencang (アンイン・カンチャン) [強い風]」に集約される彼の才能に驚かされます。アコースティックギター、フルートなどを軸に聴かせる王道のメロウポップスながら、心の琴線に触れる優しくメランコリックで感動的なメロディが圧倒的。彼の甘く優しい歌声と相まって、一聴で心に刻み込まれてしまうようなポップスの魔法が宿った名曲です。他の楽曲も、素晴らしいナンバーのみでひたすら驚かされますが、しなやかなグルーヴ感と歌心が融合したメロウグルーヴ「01. Gelung」、同じく穏やかなストリングスが宙を舞う「04. Bunga di Telinga」（中盤の泣けるトランペットのソロもスバラシイ…）、泣ける旋律が沁みるロッカバラードの「03. Biar Seribu」、泣きのメロディと物悲しいコーラスワークが涙を誘うアコースティック・ロックの「05. Sang Penikam」など、収録された全ての楽曲は“名曲”と言って差し支えのない極上のクオリティ。さらに前述の名曲のピアノ弾き語りヴァージョン、「06. Angin Kencang [Acoustic Live ver.]」や、プロダクション・デシネの国内盤にのみ収録される「07. Angin Kencang [Special Acoustic ver.]」（同曲のアコギでのスペシャルVer.）は、彼がシンガーとしても、演者としても圧倒的な才能の持ち主である事を教えてくれるテイクで感動を禁じ得ません。そして、ノスタルジックなセンス溢れるアートワークも素敵だと言う事を特筆しておきます。

プロダクション・デシネでは、以前からも数々の知られざるアジアの才能たちをご紹介して来ましたが、ノ・サリもまた信じられないほどの才能にあふれたアーティストです。言葉の壁を軽く乗り越えて、直接心の奥に語りかけて来るような素晴らしい音楽に、是非とも耳を傾けてみて下さい。決して最新の流行にマッチする音楽では無いと思いますが、永遠に廃れる事の無い音楽でもあります。

Noh Salleh (ノ・サリ) :
マレーシアでは音楽賞を総嘗めにし絶大な人気を誇るロックバンド『Hujan』の中心人物。自身はプロデューサーとして数多くのヒット曲を手掛け、映画音楽やTV番組の音楽を手掛ける傍ら、自身はロック、ヒップホップ、ジャズなどを通過し、ソロ・アーティスト、ノ・サリとしても活動を始める。そんな彼が行き着いたのは、自らのメロディセンスと素晴らしい歌声が輝く王道のメロウポップ。デビュー作となる『Angin Kencang (強い風)』は、言語を超越した心に響くメロディだけが詰まった、紛う事無き名作です。