シャ ルージュ CHAT ROUGE
ジャンルにとらわれないアプローチをひたすら求め、発表してきたSamが、今回、取り組んだのは、エレクトリック・タンゴからクラブ・ジャズの流れの中で、キーボード、バンドネオン、エレクトリック・パーカッションと共に、音の波を自由自在に泳いでいる基本ラインは、カヴァー・アルバム。
このアルバムを手に取るからには、あなたは何らかの意味で確かにSamをご存じなのだろう。とは言えここで注目したいのは、何よりもその独特で素晴らしい“歌い手”としてのSamについて。多くの方がSamについて思い浮かべるだろういささかの事ども……夜のとばり、衣装の色遣いやマテリアル、謎の人格、不思議な語り口、そんな誰もをワクワクさせるような要素が重なるのだから、あえて具体的なプロフィールを詮索するのはヤボ。特に、ときに聞かれるその博識さや体験談が魅力的であればこそ、Samのほかの部分はかえって秘めたままにしておいた方が素敵だ。だからこそここでは、“歌い手”Samがどのようにして今ここにいるかだけを簡単に記してみよう。
クラシックピアノを学びながらも、次第にその音楽の嗜好はより自由な方向へと向かい、やがてJAZZ-VOCALへの憧れからホテルやラウンジなどで唄い始めた-それが“歌い手”Samの原点だったという。1990-2000年まで続けた渋谷JEAN-JEAN'での独創的なステージが、そんなSamを今日のユニークこのうえない存在へと育てる。新しい試みとさまざまな音楽的経験の積み重ねが、誰にもまねのできない音楽へと結実していったのだろう。たとえばカヴァーを唄うとき、訳詞が必要ならSamは必ず自分自身で詞を書く。それによってその歌は紛れもないSamのうたになるのだ。又、意外に御存知ない方が多いらしいが、当たり前に、彼は作詞&作曲も自身でこなす。今回のダブルCDは初めてのカヴァーアルバム。スタンダードを中心とした世界の名曲のSamヴァージョンと自作のセルフカヴァーだ。ここに到達するまで、Samは4枚のアルバムを創ってきた。