プッスール：交錯する色の交錯、あなたのファウストの鏡像 HENRI POUSSEUR: MIXED MUSIC 1966-70

ベルギーの作曲家プッスールは、セリーを中心とした当時の最先端の作曲技法を吸収し、またケルンとミラノの電子音楽スタジオでも研究員を勤めた、ヨーロッパ現代作曲界のメインストリームに位置する存在。２０代にしてブレーズ、シュトックハウゼン、ノーノらの後を受けてダルムシュタット夏期講習で教鞭を執るまでの存在であった。しかし、彼の作品は、マルチトラックを如何様に合成する事も許されるなど、ＬＰやＣＤといったメディアで発表する事が難しいものが多い。このような理由から、その知名度に反して録音は少なく、彼の音に実際に触れる事はなかなか難しい。本作は、特に有名なプッスールの２作品の小編成版を収録したもの。現代音楽作品としてとくに有名な「あなたのファウスト」（観客の選択によって物語の展開が変わる）をベースに作られた「あなたのファウストの鏡像」では、別のルールによって可変性が獲得された録音用の作品で、ＣＤ化の選択としては最適。即興音楽風の楽章、ロマン派音楽の引用、そして最後にそれが交錯する構成を通し、カットアップされた12声の叫び声やモノローグが次第に歌になるなど複数の形式をセリーで統合するという重層構造を持つ作品。一方の「交錯する色の交錯」は人種問題を題材とした作品で、複雑に配置されたテキストの交錯がそのまま音楽構造にもなっていく。